建築家・飯沼竹一のブログです。暮らしや住まい、家や建築、街などを通して見聞きしたこと、日々感じたこと、考えたことなどを気儘に手記にしています。四方山話も含めて呑気に続けて行こうと思います。 ご意見ご感想などお願いします。
新潟県中越沖地震に想う
また新潟で大きな地震が起きてしまった。
被災された方々に、心よりお見舞い申し上げたい。

まだ被害の全容は分からないが、1日経過して死者9人、重軽傷者1000人以上、家屋も全壊300棟以上との甚大な被害の情報が流れている。

今年3月に発生した能登の地震でも、テレビなどで古い木造家屋の全壊した様子を映し出していたのを思い出される。
今回の地震でも、テレビから流れる映像を見て、揺れの激しさがひしひしと伝わり、そこで生活していたであろう人々を思うと、あまりの無惨さに言葉も出ない。
そして、古い木造家屋の脆さ、危険さをまざまざと見せつけられたように感じた。
また、今回の地震で感じたことは、倒壊した家屋が街路や隣家に被害を与えている状況がかなりありそうであることだ。そして、住宅に付属するブロック塀や石積みの塀の倒壊、商店街のアーケードの破損などである。自分や家族が被災するだけでなく、たまたま通りかかった人を巻き込むことを十分考えたい。行政も早急に対応すべきである。

とにかく、この日本では、地震は何時何処で発生するか分からない。
自分の住まいが地震に対して危険か安全か…それを知ることがとても大切である。危険であれば全壊しないための対策を、簡易的にでも講じることが肝要である。
これまでにも、このブログなどで耐震診断の必要性を強く訴えてきたが、多くの人が他人事と考えず、できるだけ早く対応して欲しいと思う。

なお、住まいの耐震性に心配のない人は、少なくともタンスや食器棚などの転倒が起きないよう、日頃より準備しておくことを勧めたい。
突っ張り棒などの固定金物などはかなり普及したことと思う。注意したいのは、吊り戸などの開き戸が開いてしまい、中の収納物が飛び出してくることである。開放防止の金物などで止めるだけでも食器などの破損が少なくて済む。飛散した食器やガラス等で怪我をするケースが非常に多いことから是非とも対応して欲しい。


被災地は、いまだに大きな余震も続いているようだ。
とにかく二次被害が広がらないように祈る。

そして迅速で暖かな支援と早期の復旧を願う。



sky-seed.jpg
スポンサーサイト
スウェーデン式サウンディング試験は万能ではない
私の事務所の現在設計中の物件で、敷地地盤のボーリング標準貫入試験(※2)をすることになった。
木造2階建てで延床面積115㎡のごく普通規模の住宅である。

なぜ、その様な大げさな試験まですることになったかというと…
このお施主さんは、私どもに設計を依頼する前に、ハウスメーカーで見積を取得していたようで、無料だから是非地盤調査をさせて欲しいと営業マンから頼まれたらしい。工事契約が成立しなくても費用を請求しないし、その地域の地盤データとして蓄積できるのでそのハウスメーカーでもメリットがあるとの説明だったらしい。

そして、このハウスメーカーは、スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)を敷地の四隅で行った。

ところが、その結果はあまり地盤が良くないとの説明で、2箇所で4cmほどの不等沈下を起こす可能性があるという。その対策として14m鋼管杭を20本を打設して補強する…費用は概ね150万円也…そして、そのハウスメーカーは杭打設による補強をしない限り、工事を請け負えないとお施主さんに要求したらしい。

だから、私どもが設計委託を受けたときに、お施主さんは150万円ほどの地盤補強をするつもりで覚悟していたらしい。
しかし、私は現地を直接見て、地盤補強なんて無用だろう、という感じを持った。
その理由は、敷地は30年ほど前に宅地造成された分譲地の一角にあり、近隣の住宅をザッとチェックしてその様な被害が見つからない。お隣さんに地盤のことを聞いても良い地盤で沈下なんていう被害は聞いたことが無いと言う。
だから、お施主さんからこのハウスメーカーの報告書をみて、疑問ばかり出てきたのである。
付き合いのある土質コンサル会社に相談してみた。このコンサル会社の担当者も同意見であった。

そこで、施主にはもう一度SWS試験を実施して、地盤に問題ないことを確認して、無駄になるであろう杭工事の取り止めを提案した。
ただ、そのコンサル会社の担当者が、SWS試験をして、同じような結果がでたら、その先の補強方法の判断に困るだろう、と。だから、実費だけで構わないからボーリング標準貫入試験をやらせて欲しいと提案してきた。
考えてみれば、150万円も費用掛けて対策するよりも、ボーリング1本掘ることで、地盤強度が分かり安心して直接基礎を計画できれば、それに超したこと無い。お施主さんも私どもを信頼してもらえこの提案に賛同してくれた。


そして、ボーリング標準貫入試験が出た。
実はこの結果にも驚くべきことが分かったのだが、土質状況は地盤レベルから8mの深さまで盛り土であり、その下に関東ロームがある地層であった!予想外であったが、その盛り土は粘性土でN値(※3)という地盤の固さを表す値が3以上であった。だから結果として木造住宅レベルの重さの建築物は、補強しなくても十分支持できる地盤であることが確認できたのである。

さて、ハウスメーカーの報告書である。
結局、14m付近には関東ローム層の下のN値3の粘性土であった。この地盤ではおそらく鋼管杭が支持できないと思われる。つまり、14mまで鋼管杭を打ち込んでも直接建物を支持するわけでなく、ほとんど意味のない工事になると考えられた。

やはり、杭や地層深くまで行う地盤改良を選択する際は、SWS試験だけではより正確な判断を行うのが難しくなる。
いくら無料で地盤調査をしてくれると言っても、一般の建築主にはその結果報告をチェックできる知識は無いのだから、その営業手段には十分注意が必要な場合があると思う。

070604nt.jpg

※1:スウェーデン式サウンディング調査
鉄の棒(ロッド)の先端に円錐形をねじったようなスクリューポイントを取り付け、それを地面に垂直に突き立て、ロッドの頭部に1kN(100kg)まで荷重を加えて、ロッドがどれだけ地中に貫入するかを測る。貫入が止まった後、ハンドルに回転を加えてさらに地中にねじ込み、25cmねじ込むのに必要な回転数を測定。その結果を基に地盤の強度を判断する簡易的な調査方法。

※2:ボーリング標準貫入試験
ボーリングとは、地層構成の調査や土の採取及び標準貫入試験などを行うための孔(直径8cm)を掘ることで、標準貫入試験とは、ボーリングで掘った穴を利用して、土の硬軟や締まり具合、土の種類や地層構成を調べるための試験。

※3:N値
標準貫入試験で、重さ63.5kgのハンマーを75cmの高さから自由落下させ、サンプラーを30cm貫入させ、貫入に要する打撃回数を表す。